「おい・・、旦那。いくらあんたでも、それは窃盗罪だぞ?」 ファブレ邸の中庭。陣取るかのように、ルークの部屋の扉の前に軍服が座っていた。 「いえ・・。 ただ、あの部屋にこんなものを置かれては 余計に辛気臭くなるじゃないですか?」 ジェイドの片腕に納められた、音機関仕掛けのいかにも高価にみえる暦帳(カレンダー)は、 ND2019ルナリデーカン・イフリート・38の日で止められている。 あれから、一ヶ月経とうとしているのか。 「たしかに・・、そうだな。暦帳を止めても、時間は止まっちゃくれない。」 屈んでそれをとると、端整な顔立ちに怪訝な表情を浮かべてこちらを見上げてきたが、 「・・ガイ?」 記憶とともに、時間を投げた。 「あーあ、貴方、音機関好きだったのに・・。 ・・・・よかったんですか?」 「う゛・・・、まぁ、いいさ。 あの部屋を掃除する俺にとっては、必要のないものだし」 「主人のものを勝手に壊すなんて、使用人としては最低ですよ?ガイ。」 地面に落ちた暦帳だったものを、二人でぼんやりと見つめながら笑った。 陽だまりの中で、 まぶしいくらいにソレは輝く。 |